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概要

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?今月のテーマ??科学的な視点から、食の安全・安心について学ぶコラムです。食べものって何畝山さんに聞く!「食べもの」は「よく分からないもの」皆さんはじめまして。私はこれまで、食品の安全性についての情報を集める仕事を15年以上してきました。もともとは薬学部で医薬品の勉強をしていました。「おくすり」と「食べもの」にはとても大きな違いがあります。何だと思いますか?それは、医薬品はそれに含まれている有効成分や賦形剤(取り「知らない」ことを知るふけい扱いしやすいように錠剤やカプセルにするときに使うもの)の量や性質がほぼ完全に分かっているのに対して、食品は何が含まれているのか分からない、ということです。私達は毎日のように食べるもののことを、よく知っている馴染みのあるものだと思っています。でも味や食感の違ういろいろなブランドのお米はどんな成分がどう違うのかは分かっていませんし、自分がさっき食べたお米に含まれるカドミウムやヒ素のような有害重金属の濃度もたぶん知らないでしょう。同じパンでも昨日より今日のほうがちょっとトーストしすぎたかな…という場合には、アクリルアミドのような加熱生成物の量が違うでしょう。とてもいい香りがするコーヒーは、豆の種類や淹れ方などによって違いがあります。コーヒーの香り成分はよく調べられていて、大体1,000物質ほどあるそうですが、その中には多くの人が嫌う「発がん物質」も含まれます。もちろん量はほんの少しですが。食品に含まれる栄養成分は「日本食品標準成分表」を調べることである程度分かりますが、それは国内に流通している食品の平均的な値で、目の前にある食品とは少し違うでしょう。日本食品標準成分表の数字は時代によって変わるものもあります。さらに世界中で発表されている栄養成分のデータベースは、国によって少しずつ違います。少し青いトマトをおいておくと赤くなりますが、それはトマトに含まれる成分が変化したからで、昨日のトマトと今日のトマトは「同じ」ものではないのです。それでもトマトはトマトという食品のままで、ジャガイモに変化することはありません。化学(科学と区別して「ばけがく」と言うこともあります)的には、食品は非常にたくさんの、(一部は分かっているものの)まだまだ知られていないものからなる、かなりいいかげんな混合物です。だから医薬品と違って、安全性でも有効性でも、調べるのはとても難しいです。それでも私たちは食品のことを知りたいし、安全なものにしたい。このシリーズでは食品の安全性をどう考えたらいいのかというお話をしていこうと思いますが、一番大切なことは「私たちは知らない」ということを知ることです。教えてくれるのは…うねやま畝山ち智か香こ子さん国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長東北大学薬学部卒、薬学博士。生化学、薬理学を専攻して食品や医薬品の安全性研究に従事し、2003年以降食品中の化学物質の安全性に関する情報収集と提供を主に行なってきた。主な著書は、「ほんとうの『食の安全』を考える-ゼロリスクという幻想」(化学同人)「『健康食品』のことがよくわかる本」(日本評論社)など。08コーポロ2019年4月号