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概要

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?科学的な視点から、食の安全・安心について学ぶコラムです。今月のテーマゲノム編集食品の安全性畝山さんに聞く!話題の「ゲノム編集」とはこの春以降、ゲノム編集食品という言葉をニュースでよく聞くようになりました。きっかけは厚生労働省の専門家部会で、ゲノム編集のうち、通常の交配や自然に起こるものと区別がつかないようなものについては、遺伝子組換え食品に要求される、事前の安全性審査を必要としないという判断が下されたことです。それに対して消費者団体などから不安だという意見が出ています。こんなニュースを目にしたら、心配になってしまうのが当然だと思います。でもゲノム編集が新しい技術だから影響がよく分かっていない、というのは少し違います。ゲノム編集という技術は、農作物の品種改良に用いられる手法のうち、新しいもの(NBTといいます)の一つですが、より精度の高い遺伝子組換え、と言うことができます。必要なのは「知る」こと農作物の品種改良には人類と同じくらいの古い歴史があります。現在私たちが食べている野菜や果物や穀物は、遠い昔から改良を重ねてきたもので、収量が多かったり毒素が少なくなっていたりと野生の品種とは全く異なる性質を持っています。はるか昔は偶然できた突然変異を選んでいたのかもしれませんが、近代になると自然には交配しないものを掛け合わせることができるようになったり、放射線や化学物質で人工的に突然変異を起こして望ましいものを選んだりしてきました。例えば、昭和40年代にイネの「フジミノリ」に放射線照射して選別した品種が「レイメイ」です。そしてバイオテクノロジーの進歩で格段に早く性質を変えることができるようになったのが遺伝子組換え技術です。遺伝子組換えにより、もともとその植物が持っていない性質の遺伝子を導入できるようになったために、販売前に安全性の審査をする制度が整備されるようになりました。逆に言うと、遺伝子組換え技術を使っていないものでは、どんなに性質が変わっていても安全性審査は必要ないので、どの遺伝子が変わったのかも分からないまま普通に食べられてきたのです。遺伝子組換え農作物が本格的に栽培されるようになった1996年から既に20年以上経ち、世界での栽培面積は年々増加し、日本も大量の遺伝子組換え農作物を輸入してきました。もはや遺伝子組換えが「よく分からない新しい技術」だとは言えません。遺伝子組換えかどうかに限定せず、新しい品種については安全性を確認しようという制度がカナダにはあります。私たちの生活を支えている遺伝子組換え技術、もっと基本的には育種について、日頃からきちんと考えておくべきだったのだと思います。これからでも遅くはありません、一緒に基礎から学んでみませんか?■参考サイト(くらしとバイオプラザ2 1)「新しい育種技術」http://www.life-bio.or.jp/nbt/index.html教えてくれるのは…うねやま畝山ち智か香こ子さん国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長東北大学薬学部卒、薬学博士。生化学、薬理学を専攻して食品や医薬品の安全性研究に従事し、2003年以降食品中の化学物質の安全性に関する情報収集と提供を主に行なってきた。主な著書は、「ほんとうの『食の安全』を考える-ゼロリスクという幻想」(化学同人)「『健康食品』のことがよくわかる本」(日本評論社)など。08コーポロ2019年7月号