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概要

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?科学的な視点から、食の安全・安心について学ぶコラムです。今月のテーマ食品に含まれる発がん物質畝山さんに聞く!発がん物質と食品の関係化学物質などによるいろいろな有害影響の中でも、「発がん性」は避けたいものの代表ではないでしょうか。発がん性とは人間にがんをつくる性質で、喫煙や飲酒、紫外線などが有名です。発がん性のある化学物質は発がん物質といい、中でも、遺伝子や染色体に影響を与え、それが原因となって発がんを起こす物質を「遺伝毒性発がん物質」と呼びます。この遺伝毒性発がん物質は食品の中にはあってほしくないものなので、食品添加物や残留農薬などには認められていません。添加物や農薬の認可申請の時には遺伝毒性がないことを確認する試験データを提出する必要があり、厳しく管理されています。ところが、この遺伝毒性発がん物質は天然の食品成分にも含まれ、さらに私たちが料理をするときにも自ら発生させていることが分かってきました。身近に存在する発がん物質と、私たちにできる対策食品にもともと含まれる発がん物質としては、環境由来の無機ヒ素が最もリスクを指摘されています。ヒ素は地殻に存在するため地下水に多く含む地域があり、古くから毒性はよく知られていました。食品中では毒性の低い有機ヒ素の形になっていることもあるため、区別する必要があります。(有機ヒ素は炭素を含むヒ素化合物という意味で、有機農業の「有機」とは違います。)特に無機ヒ素が多いのがヒジキで、ヒジキをほとんど食べない海外では販売禁止などの措置をとっている国もあります。無機ヒ素は水溶性なので、乾燥ヒジキは無機ヒ素濃度を減らすために十分な水洗い、水戻し、ゆでこぼしをしてから使いましょう。そして現在世界中で対策を検討しているのがコメの無機ヒ素です。コメは小麦などに比べると数十倍の濃度のヒ素を蓄積する性質があることと、コメを多く食べる人たちがいるため、最大の摂取源になるからです。カビ毒やアルカロイドの中にも発がん性があるものがあり、その数は科学が進歩すればするほど増えてきました。一方、私たちが自ら発生させている発がん物質の代表は、食品を焦がした時にできる「ベンゾ(a)ピレン」や、糖とアミノ酸を含む野菜を120℃以上で加熱した時にできる「アクリルアミド」などです。こういう天然に存在するもの、意図せず発生させてしまうものを減らすのは簡単ではありません。もちろん発がん物質を食べる量はできるだけ減らしたいので、いろいろなところで対策がとられてはいます。私たち一人一人ができることは、調理の時には加熱しすぎないこと、食生活ではいろいろなものを食べること、です。(アクリルアミドについては農林水産省が「家庭で消費者ができること」を提供しています)http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/教えてくれるのは…うねやま畝山ち智か香こ子さん国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長東北大学薬学部卒、薬学博士。生化学、薬理学を専攻して食品や医薬品の安全性研究に従事し、2003年以降食品中の化学物質の安全性に関する情報収集と提供を主に行ってきた。主な著書は、「ほんとうの『食の安全』を考える-ゼロリスクという幻想」(化学同人)「『健康食品』のことがよくわかる本」(日本評論社)など。08コーポロ2019年10月号