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概要

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山中伸弥:京都大学iPS細胞研究所所長1962年東大阪市生まれ。1987年に神戸大学医学部を卒業後、臨床研修医を経て、1993年に大阪市立大学大学院医学研究科博士課程を修了。その後アメリカ・グラッドストーン研究所博士研究員、奈良先端科学技術大学院大学教授、京都大学再生医科学研究所教授などを歴任し、2010年から現職。2006年にマウスの皮膚細胞から、2007年にはヒトの皮膚細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製に成功、新しい研究領域を開く。これらの功績より2010年、文化功労者として顕彰されたことに続き、2010年文化勲章受章。2012年ノーベル生理学医学賞受賞。畑難病の治療にiPS細胞技術が幅広く使用できるようになれば、どのようなことが可能になっていきますか。山中いまだに十分な治療法がない病気がたくさんありますが、実は、たった1種類の細胞の機能不全が原因で起こる病気が結構あるのです。それは元気な細胞を作って外から補ってやれば治せるはず。iPS細胞で病気の原因になっている細胞を作り出して、補う。再生医療の可能性はいろいろな病気に対して高いと思います。脊髄損傷のようなケガに対する可能性もあります。あとは薬の研究です。iPS細胞を使っていろいろな病気を再現し、薬の探索を製薬企業とも協力しながら一生懸命やっています。近い将来、その2つで患者さんに貢献したいと思っています。山中(司会より、1つの治療法の確立につき、どれぐらい期間がかかるものなのかを問われて)研究開発は長い道のりです。まず、実験室で研究して安全性と効果を見る「前臨床研究」で約10年。次に、実際の患者にご協力いただく「臨床試験」でまた約10年。合計約20年かけて、効果と安全性が確認されれば、日本の場合は厚生労働省の承認を経て、やっと薬として世に出回ります。iPS細胞を最初に報告したのが2007年、研究所ができたのが2010年ですから、そこから20年計画で、2030年くらいにはiPS細胞によって新たな医療を開発し、保険適用の治療としてたくさんの人に届けることが、私たちの長期計画です。せっかく良い治療法を作っても、今はまだ治療費が高額で、場合によっては1億円近い場合もあります。日本は保険や高額医療制度があるので患者の負担は少ないですが、結局は税金、つまり国民全体で負担していることになります。このまま高額の治療が続くと、患者は治っても国が倒産してしまう。治療費が高額になる理由は、研究に20年もかかるからです。しかも成功率が非常に低いので、高くならざるを得ない。研究期間が半分になり、成功率が倍になればきっと費用は10分の1や5分の1になると思います。そこにiPS細胞を貢献させたいと思っています。科学と倫理をつなぐコミュニケーションの力川村最近話題のゲノム編集ですが、毒性物質をほとんど作らないじゃがいもや、低アレルゲンの大豆が話題になっています。これらは私たちにとって有益である一方、遺伝子操作という意味では安全性について、組合員から疑問の声があります。iPS細胞の研究についても、人々の新たな希望になりますが、生命倫理との関係はどのようにお考えでしょうか。山中生命倫理、研究倫理は非常に大きな課題です。全ての科学技術がいわゆる諸刃の剣。うまく使えば素晴らしいものになりますが、使い方を誤ると逆に人を不幸にしてしまう。iPS細胞やゲノム研究もそうです。iPS細胞研究所には生命倫理専門の研究者もたくさんいます。彼らがパイプ役になって、研究者と患者、初めに、iPS細胞研究所基金室室長の渡邉さんよりiPS研究所と基金についてのお話がありました。▲