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概要

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?今月のテーマ科学的な視点から、食の安全・安心について学ぶコラムです。健康食品、本当に安全?畝山さんに聞く!長く摂取し続けることのリスク食品にはいろいろなものが含まれていて、それによるリスクもさまざまなので、リスクの大きいものから優先的に対策するのが効率的です。リスクの大きさはハザードとばく露量(摂取量)で決まります。以上がこれまでのおさらいです。これをもとに考えると、特にリスクが大きい1群の製品があります。それは、健康食品と呼ばれるものです。健康食品には法的な定義はありませんが、一般的に健康に良いと宣伝されているいろいろな商品のことを指します。特定保健用食品や栄養機能食品、機能性表示食品のような定義のあるものも含まれます。これらの中には普通の食生活では摂取できないような量を含むもの、例えば「1錠で○○何十個に相当する△成分を含む」と宣伝されているものがあります。また、私たちは普通の食生活では、お米やパンのような一部の食品以外は、毎日同じものを食べ続けることはありません。そのため1カ月や1年といった長い期間で平均すると、1日あたりの摂取量はそれほど多くならない場合がほとんどなのですが、健康食品は長期間、毎日取り続ける場合があります。1回の摂取量が多いことと、長期間に渡って続けて取ることの両方で摂取量が増えるので、健康食品のリスクは普通の食品を普通に食べることに比べて、桁違いに大きくなるのです。食品の「うまい話」にはご用心ぜひ覚えておいてほしいのは、「アマメシバ」による健康被害の事例です。アマメシバは東南アジアを中心に、野菜の一種として加熱調理でスープの具に使う、といった食べ方をされてきました。その時は特に問題がなかったのですが、健康に良いと宣伝されて、たくさん食べたり生で食べたりすることで健康被害が出ました。日本では乾燥粉末が健康食品として売られ、それを毎日スプーン1杯食べるという健康法を実践した女性たちが、閉塞性細気管支炎という非常に重い病気を発症し、死亡者も出ています。普通の食品であっても、普通でない食べ方をすると死に至ることすらある、という重い教訓です。野菜として食べていた経験は、粉末や濃縮や抽出物のカプセル・錠剤などになったら当てはまりません。また、食品として食べた経験のないものも健康食品の成分として使われていることがあります。インターネットで「楽して痩せる」「精力増強」「筋肉がつく」などと宣伝されている「健康食品」を買うのは避けてください。食品にそのような効果はありませんし、違法薬物が入っている可能性が高く、世界中で死亡を含む重大な健康被害が多数報告されています。<参考>・アマメシバの安全性問題独立行政法人国立健康・栄養研究所https://hfnet.nibiohn.go.jp/usr/annzenn/amameshiba040619.pdf・「健康食品」の安全性・有効性情報国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所http://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/index1.html教えてくれるのは…うねやま畝山ち智か香こ子さん国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長東北大学薬学部卒、薬学博士。生化学、薬理学を専攻して食品や医薬品の安全性研究に従事し、2003年以降食品中の化学物質の安全性に関する情報収集と提供を主に行ってきた。主な著書は、『ほんとうの「食の安全」を考える-ゼロリスクという幻想』(化学同人)『「健康食品」のことがよくわかる本』(日本評論社)など。08コーポロ2019年12月号