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村田吉弘Yoshihiro Murata「菊乃井」主人NPO法人日本料理アカデミー理事長一般社団法人全日本・食学会理事長京都・祇園の老舗料亭「菊乃井」の長男として生まれ、立命館大学在学中、フランス料理修行のため渡仏。大学卒業後、名古屋の料亭「加茂免」で修行を積み、1993年、株式会社菊の井代表取締役に就任。「日本料理を正しく世界に発信する」「公利のために料理を作る」が信条。さまざまな活動を通じて、「食の弱者」という問題を提起し解決策を図る。2018年平成30年春の黄綬褒章受章文化功労者に選出京都市文化功労者に選出第5回食の新潟国際賞佐藤藤三郎特別賞受賞ミシュランガイドでは、3店舗合わせて10年連続日本最多の七つ星を獲得している。大事ですね。「菊乃井」様で扱う食材にこだわりはありますか。村田「作った本人の顔が見えるもの」です。産地に出掛け、生産者と話して親しくなると「あなたのところには売ってあげる」となる。きっとどこの誰が、どのように食べるか分からないところには売りたくないのでしょうね。畑受け継がれる文化と伝統、「利他の心」畑2020年東京オリンピック誘致の際は、「おもてなし」がキーワードになりました。村田語源は「思ってもいないことをなす」で、マニュアル通りにサービスするだけでは「おもてなし」とは言えない。例えば初めて料理屋に来て緊張しているお客様に「今日はいいお天気で良かったですね。どこに行ってきはったんですか」と話しかけて気持ちをほぐしたり、四季折々の花を生け、香を焚いてお迎えすることが「おもてなし」だと考えています。私たち京都生協も地産地消や産直で、消費者が産地に行って生産現場を見学したり、逆に生産者がコープのお店に来てくれたり、消費者と生産者の交流を大事にしています。畑「菊乃井」様はお客様に一番近い仲居さんから、料理人への連携が見事だと思います。村田仲居さんと調理場、お互いの立場を考えて毎日ミーティングしています。料理は「理を料り定める」と書きます。相手の年齢、状況、時の「理」、素材の「理」みんなを料り定めて、総合的にプロデュースすると料理になる。だから予約時にあれこれお伺いします。例えば仏事と祝い事では部屋のあしらいから器まで全て異なるので、情報を前もって厨房にどれだけ伝えられているかが重要なのです。畑「料理」は単なる「調理」とは違うのですね。村田さんは料理で異業種連携など、さまざまなことにチャレンジしておられますが、伝統を守ること、変化への対応についてはどのようにお考えですか。村田「食」の分野から考える持続可能な社会畑今、生協では「誰もが笑顔で暮らせる社会」を未来に残すために、SDGs(国連で採択された「持続可能な開発目標」)の取り組みに注力しています。食品ロスが社会問題になっていますが、「菊乃井」様でも食材を無駄にしないための取り組みはされていますか。村田伝統を守るとは、毎日新しいことをやり続けることです。どんどん人の好みが変わっていく中で、同じものを提供し続けても喜んでもらえない。新しいことそのものは点で見ると革新なのですが、ふり返るとひとつの線になっていて、それが伝統になるのです。畑伝統と革新は対立軸ではなく、革新を続けると伝統になっていく。それが「菊乃井」様のブランドでもあるのですね。「菊乃井」様には「利他の心」があるとお伺いしています。村田利益を出してまず従業員を幸せにして、次に商品を買った人にも幸せになってもらう。一番近いところから幸せにしていくのが、教えだと思っています。日本料理アカデミーでは努力した者が正当に報われるよう「日本料理アカデミー検定」を創設しました。きちんと努力が報われて、それに伴う給料がもらえる仕組みです。一方で、長く世話になっているのに、給料が少し高いだけで別の職場に移るような水臭い関係だと、日本の社会はうまくいかないとも思います。畑私も教育制度は科学的にプログラムがあるべきだと思いますが、道徳心や品格、誠実さなど日本人が持って生まれた礼節や人情などは、大事にしたいです。村田日本文化が求めてきたものは、節度と品位だと思います。なんでもはっきりとものを言うのではなく、節度と品位をもって自分の品格を守る方が先だという考え方が、僕は日本的で好きです。野菜の皮や魚の骨を煮出しただしを賄いに利用しています。それと、食べ物の生産現場を知らない人を契約04