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概要

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畝山さんに聞く!?科学的な視点から、食の安全・安心について学ぶコラムです。今月のテーマ食の安全を守る「HハサップACCP」という考え方食に関わる全ての業者が取り組むHACCPとは?HACCP(ハサップ)という言葉を聞いたことがありますか?これはHazard Analysis CriticalControl Pointの頭文字をとったもので、「危害分析重要管理点」と訳されています。これは食品の衛生を、各原料の受け入れから製造、製品の出荷までの全ての工程において、食中毒などの健康被害を引き起こす可能性のある危害要因(ハザード)を科学的根拠に基づき管理する方法です。国際的には1993年にコーデックス※で食品衛生一般原則の一部として示されてから、食品安全のための基本になっています。日本では1995年から導入されていますが、実践しているのは一部の食品業者のみにとどまっていました。しかし、2018年6月13日に公布された食品衛生法などの一部を改正する法律で、原則として全ての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理に取り組むことになりました。個人で経営しているレストランや、昔から地元で季節の時だけ干し柿を作って売っているというような場合も含めて全て、です。もちろん大手食品企業の国際的な食品に求める水準を、町の小さなお店にそのまま要求するわけではありませんが、毎日のように発生している食中毒による健康被害を減らすためには、日本全体の衛生水準を底上げしていく必要があります。輸入食品についてはこれまでも要求していたので、外国にだけ厳しい要求をして国内には緩いというのでは、消費者にも対外的にも説明しにくかったという理由もあります。※1962年、国連の専門機関である国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同でつくった国際的な食品規格のこと食品安全に尽力する事業者を応援するためにHACCPの考え方では、最初に「その食品の危害要因は何か」を洗い出します。食品には危害要因がたくさんあるので、それぞれに対して必要な対策を考え、そのうちどれが最も重要かを決め、きちんと対策が実行されていることを記録に残します。何か問題があった場合にはこの記録が役に立ちますし、記録を振り返ることで改善点が見つかる場合もあるでしょう。最終的に基準を守ってさえいればいい、という考え方とは違うので、広く浸透するまで少し時間が掛かるかもしれません。しかし、日本の食の安全を向上させるためには必要なものです。英国などでは外食する時にお店の衛生水準を消費者が判断する目安として、食品衛生の格付けを掲示する制度があります。日本では自治体によるHACCP認証マークを掲げたお店もありますので、注意して探してみるといいかもしれません。食品安全のために頑張っているお店を応援することで、事業者の意欲も高まり、ひいては日本全体の食品安全性の向上につながることでしょう。<参考>自治体HACCP等認証制度https://haccp.shokusan.or.jp/rules/municipal/教えてくれるのは…うねやま畝山ち智か香こ子さん国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長東北大学薬学部卒、薬学博士。生化学、薬理学を専攻して食品や医薬品の安全性研究に従事し、2003年以降食品中の化学物質の安全性に関する情報収集と提供を主に行ってきた。主な著書は、『ほんとうの「食の安全」を考える-ゼロリスクという幻想』(化学同人)『「健康食品」のことがよくわかる本』(日本評論社)など。10コーポロ2020年2月号