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概要

bookcopolo2002

「有害性」×「摂取量」が「食の安全」のカギ次に、食の安全を脅かす現実のリスクについて考えます。実際の食によって発生する人体への危害は、ほとんどが生物由来。そのため、食品の安全管理の仕事は微生物管理と、意図せずに発生することもある異物混入の防止が多くを占めます。「食の安全」に対して消費者が不安に感じていることは、食品添加物と残留農薬が上位。対して、専門家が懸念していることは受動喫煙やアレルギーです。専門家の評価では食品添加物や残留農薬の順位が低く、消費者の意識とは差が見られます。このような事態は、食の安全を巡るコミュニケーション不足も一因です。生協は、消費者の不安のもとになった情報を紐解いて、科学的な知識を分かりやすく説明していくのが役目。消費者と専門家の“つなぎ”にならなければならないと考えています。食の安全性に対する考え方は、食品のリスクを評価すること。リスクは、人や環境にとって好ましくない事態が起きる確率と程度で捉えることができ、食品の有害性と摂取量の掛け算で考えます。つまり、安全性とは有害性の大小ではなく、リスクの大小の評価です。食品には栄養成分とともに、健康に悪影響を与える可能性のある物質も含まれています。わらび、焼き魚やポテトフライの焦げ、牛肉やマーガリン、食塩、赤身肉など過去にメディアなどで安全性を疑問視された食品でも、よほどの偏食・過食をしなければ、ことさらに問題視する必要はありません。ポイントは、量のコントロール。食品添加物や農薬などの化学物質は、人にとって安全な一日摂取許容量(A D I)を基準にして管理されています。「食の安全」の歴史は生協とともに消費者が「食の安全」に対して不安を抱くのは、歴史的な背景があるためです。日本では終戦後、1948年に食中毒や伝染病が多発。1950年代には、イタイイタイ病や水俣病といった公害や問題などが表面化。こういったさまざまな問題に対し、日本の消費者運動は国を監視し、国の制度を変えてきました。森永ヒ素ミルク事件(1955年)を機に食品添加物の規格基準が定められ、人工甘味料のズルチンによる急性中毒事故(1966年)ではチクロなどが使用禁止に。食肉の変色防止のためにニコチン酸を不正使用した事件(1986年)では用途外使用の禁止と使用量基準を設定。いずれも生協をはじめ、消費者運動が改善につながっています。そして、2003年には内閣府に「食品安全委員会」が発足。科学に基づき、客観的なリスク評価を行う機関として機能しています。消費者が不安を抱く残留農薬についても、毒性が高く作物や土壌への残留性の高い農薬を使用していた1960年代に農薬事故が発生し社会問題化。その後、農薬取締法が改正され、現在の農薬開発は、人に対する毒性が弱く、残留性の低いものへと移行しています。近年注目されている「遺伝子組み換え技術」と「ゲノム編集技術」に対して、生協は、食品開発者への情報提供を要請し、国には抜け道がなく実効性の高い届け出制度の構築などを訴えています。こういった品質保証の取り組みを通して、「普通の人」の「普通の食卓」の安全を守っていくのが生協です。そして、安全・安心な食を守ることを通じて、持続可能な社会の実現を目指します。講演を聞いた組合員からの質問に、吉田さんが答えました。ニュースなどでよく聞く「豚熱(豚コレラ)」、ワクチンの安全性は?ワクチンがヒトの健康に影響することはありません。豚熱(豚コレラ)のワクチン接種はウイルスを薄めたものを豚に注射し、免疫を作るというもの。免疫によってワクチン由来のウイルスを破壊するので問題ありません。また、精肉前に豚の免疫力を高めるため、出荷自粛期間を設けているので、お肉にワクチンが残るということはありません。安心してご利用ください。一日摂取許容量(ADI)、複数の食品添加物を摂取すると体に悪影響はある?日常摂取している範囲内では、リスクは極めて低いと考えられます。「日常的な食品の摂取量であれば、人間の体内環境で毒物同士が反応して新しい物質を作るといったことはありません」と食品安全委員会でも報告されており、取り立てて心配する必要はありません。一つの栄養素や成分に偏ることがないように、まんべんなく食べるのは健康維持にとっても重要なポイントになります。コーポロ2020年2月号09