ブックタイトルbookcopolo2012
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教えて!森田さん?食の安全・安心情報を科学的視点で、皆さんに分かりやすくお伝えするコラムです。今月のテーマ農薬はなぜ嫌われる?農作物の安定供給のために農薬は不可欠ですが、何となく健康や環境に悪そうと思われがちです。最近はネオニコチノイド系農薬など新たな問題も出てきました。農薬の規制はどうなっているのでしょうか。農薬は厳しく規制されている農薬が嫌われる原因の1つに、戦後に化学合成品が普及しさまざまな問題を引き起こしたことが挙げられます。昭和30年代には毒性の高い農薬が使われて中毒事故が多発し、環境汚染も広がりました。その後、国は農薬の規制を見直し、登録にあたって発がん性や遺伝毒性など、安全性に関するさまざまなデータをメーカーに求めるようになりました。現在は内閣府食品安全委員会が安全性審査を行い、それを基に厚生労働省が作物ごとに農薬の基準値を定めています。この基準値を超えないように農薬の使用方法が定められ、生産者はルールを守って適切に使用し、記録もきちんとつけています。また、実際に基準値を超えていないかを調べる残留農薬検査も、公的機関や農協、生協などが行っています。検査で基準値を超えることはほとんどなく、安全性は厳しくチェックされています。こうしてさまざまな人々の努力によって、私たちのもとに安全な農産物が届けられています。グリホサート、ネオニコチノイド系農薬など新しい問題は?ところが最近、農薬について気になる記事を見かけます。まずは除草剤のグリホサート。2015年、国際がん研究機関(I A R C)が「グループ2 A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)」に分類し、問題となりました。しかし、2016年に食品安全委員会は「発がん性は認められなかった」とし、国連のFAO/WHOの専門機関も「グリホサートがヒトに対して発がん性のリスクになるとは考えにくい」と発表しています。発がん性と聞くと心配ですが、適切に使用されれば人の健康上の問題はないことが確認されています。もう1つ、殺虫剤の一種であるネオニコチノイド系農薬は、ミツバチなど周辺環境への悪影響が心配されています。日本ではEUほどの被害はこれまで報告されていないものの、調査が継続して行われています。令和3年度からは、農林水産省で農薬の再評価も行われる予定です。なお、日本ではネオニコチノイド系農薬は水田でカメムシ防除のために多く用いられます。カメムシがつくとコメが黒くなり、この粒が少しでも混ざると規格が下がるため、農家は使わざるを得ない状況です。この規格も今後見直しが検討されており、農薬使用の減少につながることも期待されています。農薬はこれまでも登録の際に環境影響も調べられてきました。より安全で環境にやさしい農薬が使われるように、常に確認や再評価が行われ、厳しく規制されていることも知っていただきたいと思います。執筆者PROFILE消費生活コンサルタントもりた森まき田満樹消費者団体(一社)Food Communication Compass代表。消費生活コンサルタント、東京海洋大学非常勤講師。食品安全、食品表示、消費者問題などで、講演や執筆活動を行っている。国の審議会・検討会は、消費者庁・食品表示一元化検討会委員、食品添加物制度に関する検討会委員、厚生労働省・食品用器具及び容器包装の規制に関する検討会委員など。著書は『新しい食品表示がわかる本(女子栄養大学出版部)』『食品表示法ガイドブック(ぎょうせい)』など。08コーポロ2020年12月号