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教えて!森田さん今月のテーマ食の農薬の急性参照用量「ARfD」とは?執筆者PROFILE消費生活コンサルタントもりた森ま田満樹消費者団体(一社)Food CommunicationCompass代表。消費生活コンサルタント、東京海洋大学非常勤講師。食品安全、食品表示、消費者問題などで、講演や執筆活動を行っている。著書は『新しい食品表示がわかる本(女子栄養大学出版部)』『食品表示法ガイドブック(ぎょうせい)』など。き2020年12月、福岡県で春菊からイソキサチオンという農薬が、基準値の180倍(9ppm)もの高濃度で検出され、「食べると危険」と報道されました。すぐに調査が行われ、ある生産者が他の畑で使った農薬の残りを春菊にまいたことが原因と分かりました。幸い健康被害は報告されませんでしたが、農薬は恐ろしいと思われた方も多かったと思います。この時、説明に使われたのが、農薬のARfD(Acute Reference Dose:急性参照用量)という言葉です。これは、人がある物質を短時間(24時間以内)に食べた場合に、健康に悪影響がないと推定される摂取量のこと。聞きなれない言葉ですが、農薬の急性毒性を評価する新しい考え方です。農薬の安全を決める2つの評価基準図ADI(一日摂取許容量)とARfD(急性参照用量)動物などを用いた毒性試験長期毒性試験安全係数残留農薬基準(作物ごとに定める)ところで、冒頭の春菊の事例は、このような違反品を毎日食べるわけはないので、リスクを伝えるにはARfDが参考になります。イソキサチオンのARfDは0.003mg/kgで、体重60kgの人は0.18mgに相当します。春菊の残留濃度が9ppm(mg/kg)であれば、これを20g超えて摂取すると健康に悪影響が出るおそれがあります。その後、この春菊は自主回収も行われ、生産者の指導も徹底されました。短期毒性試験安全係数ADIARfD(一日摂取許容量)(急性参照用量)農薬は、動物実験などの結果をもとに残留農薬基準が定められます。一般的には長期の毒性試験で毎日食べ続けても毒性はないという無毒性量を求め、安全係数をかけたADI(一日摂取許容量)を定め、そこから作物ごとに基準を決めてきました。しかし、十数年前から農薬混入事件などが相次いだことを受け、一度に多量の農薬を摂取しても急性影響が出ないかどうかを評価する「短期暴露評価」をもとに、A R f Dが定められました。現在は長期(A D I)と短期(A R f D)の2つの評価基準によって、農薬の安全性が評価されます。自治体で監視農薬の適正使用本来は、生産者が農薬使用日誌をつけてきちんと管理している上に、地方自治体が監視のために定期検査を行っています。そして、極端に基準値をオーバーした場合はARfDを用いて注意を呼びかけます。今回のケースは監視機能が働いた事例ともいえるでしょう。生協は特に安全確保に力を入れており、産直活動や独自の残留農薬検査の取り組みが進められています。コーポロ2021年4月号