ブックタイトルbookcopolo2109

ページ
8/16

このページは bookcopolo2109 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

bookcopolo2109

Special feature特集2021.7.3(土)京都生協、コープしが、大阪いずみ市民生協、ならコープ、わかやま市民生協共同開催「気になる食の不安情報、その正体残留農薬から食品添加物まで」オンライン講演会&座談会を開催しました科学ジャーナリストの松永和紀さんを講師に迎え、YouTube配信にて講演会を開催しました。休憩後は各生協の理事とともに「あなたの感じている食の不安」をテーマに座談会を行いました。当日は161人の参加がありました。今回はその中から一部を抜粋し、ご紹介いたします。講師:松永和紀さん京都大学大学院農学研究科修士課程修了。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、科学ジャーナリストとして活動を開始。『メディア・バイアス――あやしい健康情報とニセ科学』(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞受賞。2021年7月から内閣府食品安全委員会委員(非常勤、リスクコミュニケーション担当)。※この日の講演・発言は組織の見解を示すものではなく、ジャーナリスト個人としての見解とのことでした食品=多様な物質、未知の物質、微生物などの塊食品は栄養成分のほか、味や香りとなる物質、未知の物質、微生物など、さまざまなものを含んでいます。昔は意図的に使われる農薬、食品添加物以外の物質について研究が進んでいませんでした。自然天然でなんの問題もない食品に悪い農薬や食品添加物が使われ含まれてしまうのだから、農薬や添加物は排除しなければならないと考えられていました。その後研究が進み、実際には農薬、食品添加物以外にも微生物やカビが作る毒性物質、加熱の工程でできる発がん物質など、たくさんの危害をもたらす要因が含まれていることが分かってきました。危害をもたらす要因のことをハザードと呼んでいます。そして、そのハザードをどれくらいの量食べるかによって、健康への悪影響の程度、すなわちリスクの大きさが変わってきます。よく下記のような式で表されます。リスク=ハザード(危害要因)×摂取量私たちは加熱調理の過程でできた発がん物質も食べていますが、摂取量がそれほど多くはないのでリスクは大きくなく、それよりも加熱による殺菌や栄養、食品がおいしくなるなどの利点の方がはるかに大きいと考えられます。お酒のアルコールもハザードの1つです。摂取量が多すぎるとリスクも大きくなり命に関わります。しかし、適切な量にとどめればリスクは小さくなり、お酒を楽しむことができます。こうして、私たちはリスクと付き合っています。農薬とADIまた、残留農薬もハザードの1つです。農薬は主に、病害虫や雑草から作物を守るために使われます。現在は一つひとつの農薬について、危害の性質はどんなものか、摂取量がどれぐらいだと深刻な健康影響が出るかなどが詳しく調べられています。内閣府食品安全委員会が許容1日摂取量(ADI)*を定めており、登録された農薬を適切に使えば残留基準が守られADIを超えることはなく、リスクの問題が生じず安全が守られる制度ができあがっています。昔の農薬には毒性の高いものもあり摂取量も多くなってしまう場合があり、実際に中毒事故が起こったこともありました。そのため「農薬=危険なもの」という認識が広がってしまいましたがその後研究が進み、現在の農薬は毒物、劇物などには該当しないものが全体の8割以上になっています(農薬概説・日本植物防疫協会より)。ところが「危ない」という情報は届きやすく、「安全」という情報は伝わりにくいもの。いまだに昔の「農薬=危険」というイメージが強く残り、安全を守るために国や農業者、企業などが実行しているさまざまな取り組みや改善に関する情報が伝わりません。一方で、食料を安定して生産すること、気候変動(温暖化)や人やモノの移動により増加傾向にある病害虫対策などが世界中の課題となっており、農薬の助けも必要です。農薬は日々検討と改善が続いています。〇か×かの二択ではなく、総合的な視点や思考を持って、情報を判断してほしいと思います。*許容1日摂取量(1日許容摂取量=ADI):人がその物質を毎日一生涯にわたって摂取し続けても、現在の科学的知見からみて健康への悪影響がないと推定される1日当たりの摂取量。農薬や食品添加物の実際の摂取量は、おおむねADIの数%程度。座談会では各生協の組合員理事が、自身の子育ての中で「食」について悩んだことなどを語り合いました。たくさんのご参加、ありがとうございましたコーポロ2021年9月号