産地のおはなし

牛への愛情の分だけ
きっとおいしくなる。

鳥取県南部町西谷牧場 西谷拓実さん

大学で目の当たりにした
仲間の真剣な想い

西谷牧場は、私が3代目。家族で酪農を営んでいるので、小さい頃から当たり前のように牛の世話をしてきました。当時は魚釣りが大好きで、「将来漁師になりたい」とよく言っていたそうで、自分から積極的にではなく、父に叱られないようにしぶしぶ手伝いをしていたとか。
そんな私も高校生の頃には牧場を継ぐことを意識するようになり、鳥取県内の農業高校を卒業後、酪農科のある北海道の酪農学園大学に進学しました。入学して驚いたのは、家業が酪農家ではないのに、イチから酪農家を志す仲間がたくさんいたことです。共に学ぶうち、彼らの酪農に対する真剣な気持ち、本気の想いを目の当たりにし、自然な流れで酪農家の道を進んできた自分の甘さを痛感しました。そして酪農と真剣に向き合うようになり、よりいっそう酪農家になりたいという気持ちが強くなりました。父も私の気持ちの変化に気づき、とても驚いていましたね。

牛への愛情＝牛乳のおいしさ

酪農をしていて一番うれしい瞬間、それは乳を搾る時。良質な生乳は、よい形とよい血色をした乳房をもつ牛から搾れます。自分が子牛から大切に育てた牛が、健康的な乳房の牛に育つとうれしくてうれしくて。ついつい写真に撮ってしまいます。反対に、大切に育ててきた牛が病気をしてしまい、乳を搾れなくなった時が一番辛いです。その度に、自分の管理不足を責めています。なので日頃から「牛をよく見ること」を意識し、一頭一頭の行動、見た目などに変化はないか、細心の注意を払っています。牛が生まれてから成牛になるまでしっかりと見守ってあげたいですし、牛が役目を終える時には「よくがんばったな、ありがとう」と笑顔で送り出したいです。愛情をこめて育てている牛だから、自信をもって「おいしい」と言える生乳が搾れるのだと思います。

見えない部分に
「おいしい理由」があるんです。

鳥取県大山町山下牧場　山下正太さん・敏子さん

飲んでくれている人の顔が見える。
だから乳質にこだわる。

山下牧場は、息子2人とともに4人で営む家族経営の牧場です。山下牧場が、「せいきょう牛乳」を製造する「大山乳業農業協同組合」に生乳を出荷するようになったのは40年前。それまでも良質な生乳への意識はもっていましたが、大山乳業へ出荷するようになってからは「消費者の顔」が見えるようになり、さらに高い意識をもつようになりました。「大山乳業の牛乳のファンです」と言ってくださる方と直接交流することがモチベーションにつながっています。どこに自分の生乳が届いているかがわかる。飲んでくれている人の顔が見える。それが乳質にこだわる理由の一つです。

「酪農をやりたい」と
思ってもらえるように

鳥取県の酪農の現状は「厳しい」状況が続いていますが、少しでも生産コストを下げるため、自給飼料を中心とした循環型農業をすすめています。山下牧場では粗飼料の８０％を自給。コストの安定化を目指しています。「酪農教育ファーム」にも取り組んで、地域の子どもたちを牛舎に招いて牛に触れてもらうこともやっています。私たちがやっている『酪農』を見て、『酪農をやってみたい』と思ってもらえるように。そしてゆくゆくは、孫にこの牧場を継いでほしいです。

自家栽培している「イタリアンライグラス」をロール状にまとめ、ラップでぐるぐる巻きにして密閉してラップサイレージをつくります。
牧場の前で一際目立つ牛さん 「ろーるちゃん」!
中身は、ラップサイレージで出来ており、見学に来られる人の目印になるように、牛舎の前を通る人に楽しんでもらえるようにと、山下さんご一家で作成されました。