生麸
商品ものがたり
京都人がこよなく愛する、 ちょっと特別な存在
京都を代表する食材の一つとして、長く愛されてきた生麸。古くは宮中や僧堂で特別な時にのみ食されるもので、近代に入ってからも、仕出し料理や料亭などで出される高級食材という扱いでした。「京都生協で生麸の取り扱いが始まったのが、今から35年ほど前です。以降、一般家庭の食卓に生麸が登場する機会が徐々に増えていったように思います」。そう話すのは、生麸のメーカー「株式会社 半兵衛麸」(以下、半兵衛麸)営業部の山本さんです。
半兵衛麸が大切にしているのは、柔らかいのにしっかりした生麸であること。「うちの生麸は他社のものに比べて生地が少し固め。口当たりは柔らかく、かめばしっかり、もっちりとした弾力が感じられます」と教えてくれたのは、製造部の樋口さん。
生麸の主原料は「グルテン」と呼ばれる、小麦粉に水を混ぜて沈殿した成分のみを抽出したもの。あとはもち粉と水、よもぎもしくはあわのみと、とってもシンプルな原料です。おいしい生麸を作る最大のポイントは、冷凍グルテンを解凍し、水で戻す「調整」という工程。季節や工場の室温に合わせて、水の温度や戻し時間を微妙に変えていきます。判断基準は、生地を引っ張ったときの伸び具合や、つるりと滑らかな手触りなど、職人の勘だけが頼りです。「グルテンは生き物。ちょっとしたことで様子が変わってしまうんです。『調整』を誤ると粗さの目立つ生麸になってしまうので、戻し具合のこまめな確認が命です」と樋口さんは語ります。
良い具合に調整されたグルテンは、もち粉と混ぜ合わせられ、よもぎやあわと一緒に十分に練られます。仕上がった生地は昔ながらの木枠で成形され、蒸しあげるとプルンプルンに!その後、大量の水で一時的に冷まし、最後は氷水でしっかりと締めます。
成形した生麸を一つ一つ丁寧に、木枠に収めていきます。木枠は生麸の蒸し上がりの形や風味にも影響するので、伝統的な「半兵衛麸の生麸」の味を作るために欠かせない存在
感謝の気持ちがつなぐ おいしさ
実は樋口さんが半兵衛麸で働きだした約20年前までは、生麸は日によって仕上がりに微妙なムラがあるのが当たり前だったそうです。「生麸は決して必需品ではない、嗜好(しこう)品です。価格も安くはありません。期待して買ってくれたお客様をガッカリさせたくないな、と」。樋口さんはそう思い立ち、あくる日から毎日、気温や練り回数、調整時間などを細かく記録し、どの条件がそろった時においしい生麸ができるのかを独自で追求しました。たゆまぬ努力の結果、今では安定した品質を常にお届けできるようになったのです。「今も昔も、買ってくれる方への感謝の気持ちが原動力です」と、樋口さんは話します。
蒸したての生麸はつやつや、ぷるぷる。むっちり、ほかほかとした見た目はまるで赤ちゃんの肌のよう
試行錯誤しても、やっぱり 戻ってくる「この味」
半兵衛麸ではもっとおいしい生麸を求め、原料の配合、製造方法や使用する道具を変えるなど、数々の試作を行ってきました。しかし、どんな方法でも今の生麸を超えるものにはなりませんでした。先人から受け継いできた「これぞ半兵衛麸の生麸」と呼べるものを社員みんなが知っているからこそ、工場では前工程で「少し生地が固かった」と伝えれば、後工程で練り具合や蒸し時間を調整します。そうした職人同士のあうんの呼吸によるチームプレーが、おいしい生麸づくりを支えているのです。
「正直、食感や風味は誰にも分からないようなごくごく微妙な違いもあります。でも、自分たちが本当に良いと思えるものを提供したいので、妥協はしません」と樋口さん。半兵衛麸の家訓である、利益だけでなく正しい人の道を大事にする「先義後利(せんぎこうり)」の考え方が、社員一人一人の心に根付いています。
シンプルだからこそこだわりが光る、「ほんまもんの生麸」をご賞味ください。
- 生麸(よもぎ・あわ) 各30g
- 十勝産小豆のぜんざい※ 1袋(160g)
- A=練り黒ごま 大さじ4、砂糖 大さじ1、塩 少々、水 1カップ
- 栗甘露煮 適量
- ※市販のレトルトぜんざいでも作れます
生麸の黒ごまぜんざい
調理時間:約10分
1人分:カロリー 381kcal 塩分 0.7g
(2人分)
- 1.生麸は食べやすく切り、トースターで焼き色がつくまで焼く。
- 2.鍋にぜんざい、Aを入れて火にかけ、混ぜながら温める。
- 3. 器に2を注ぎ、1、栗甘露煮を入れる。