点検レポート
産直産地の点検 若どり まるほ食品㈱
- 2023年11月23日
- 産地点検
点検日 2023年7月13日
産直若どりを生産されている、まるほ食品㈱徳島工場は、徳島県美馬市美馬町の吉野川沿いにあります。徳島県と香川県にある契約農家で飼育された鶏を仕入れ、食肉処理(鶏の命をありがたくいただき、鶏肉を加工して部位ごとに分ける作業)をされています。その後、鶏肉は京都市にある㈱京都キョウショクで、消費者向けに包装され、京都生協の店頭※に並びます。
※産直若どりは、現在、店舗のみの取り扱いです。
産直若どりの誕生は1980年にさかのぼります。当時「産地や飼料・飼育方法がはっきりして、安心して食べられる鶏肉を」という組合員の願いと、「厳しさを増す養鶏経営に活路を見出したい」という生産者の願いが一つになって開発されました。
以来40年余り、組合員の皆さまに支持されてきました。ぜひご利用ください。
お総菜コーナーでは、産直若どりを使った唐揚げをご用意しています。こちらもあわせてご利用ください。
鶏の生産は「いつ、何羽出荷するのか」の計画を立て、逆算して各農家に雛を入れる日、エサなどの資材や、運搬車両を手配します。
各農家には生後間もない雛で入り、約45~51日齢まで育てて出荷されます。契約農家はたくさんありますが、飼育方法は統一されており、これらの生産管理(農家への巡回と指導)を、まるほ食品㈱と㈱カワフジの2社で行われています。
ここから農場の点検です。
今回は、徳島県美馬市にある泉木農場を点検しました。香川県境に近い山中にあり、目前に、段々畑ならぬ段々鶏舎がひろがっていました。
泉木農場は昭和初期に開かれ、代々、泉木さんが維持管理されていましたが、ご高齢により、現在はカワフジの社員である石槌さんが管理されていると伺いました。まるほ食品の山下さんによれば、「農場を守ってこられた方が引退すると、後継者がなくそのまま廃業されるケースもある」と伺いました。産直若どりの産地でも、後継者不足(人手不足)が問題になっていることがわかりました。
こちらは鶏舎の入口付近の様子です。
鶏の伝染病対策のため、関係のない人の入場そのものを禁止しています。地面には消石灰がまかれ、人や車がここを通ることで、履き物やタイヤを消毒することができます。
鶏舎周辺の様子です。
鶏は土間の平飼いで、壁は金網などでできており、空気の通りが良い構造(開放鶏舎)になっています。カーテンは必要に応じて開閉できるようになっています。鶏舎周辺は、草が刈り取られ、不要なものはありませんでした。(草が茂っていると、虫や動物の隠れ家や、鶏舎の換気の妨げになります。)
鶏は汗をかいて体温を下げることができないため、熱がこもると最悪の場合、死んでしまうとのことです。夏場はカーテンを降ろして金網だけにし、ファンも併用して放熱します。それでも追いつかない場合は、鶏舎の屋根に水をかけると説明がありました。また、鶏舎内にたまる熱を緩和するため、夏は飼う鶏の数(密度)を減らしていると説明がありました。一方、冬は雪が降ることもあるそうで、カーテンなどで外気を遮断し、保温していると説明がありました。
ほかにも毎日鶏舎を見回って、鶏の状態に問題がないかを観察しながら、エサ樋や水のみ場をきれいにし、金網に付着したホコリなどを掃除していると説明がありました。実際に鶏舎が清潔に保たれていることを確認しました。
鶏舎に入る時は、専用の長靴に履き替え、消毒液の入った水槽で長靴を消毒してから入ると説明がありました。(防疫上の都合で、関係者以外は鶏舎内へ入れません。)消毒液は、原液を計量カップで量って消毒槽に入れ、水を決まった高さまで注ぐことで、所定の濃度になると説明がありました。(もし消毒液の濃度が薄いと、消毒の効果が下がってしまいます。)
鶏の病気を予防するために使われるワクチンや抗生物質の扱いについて確認しました。
ワクチンは法律で規制され、獣医師の処方箋がないと購入・使用ができません。抗生物質も法律で規制され、使用方法が決められています。また、ワクチンや抗生物質を使用した場合、鶏を出荷してはいけない期間(休薬期間)が、薬品ごとに法律で決められています。こうした決まりを守ることで安全な鶏(お肉)を出荷することができます。
ワクチンについては使用計画と処方箋、および購入記録・使用記録・在庫を照合し、獣医師の処方のもと適切に購入・使用されていることを確認しました。
抗生物質については、飼料と一緒に与えられています。「抗生物質が入っている飼料」から、「抗生物質が入っていない飼料」へ切り替えた日が記録され、出荷前21日以上休薬期間があることを確認しました。
備品の保管状況や、消火器の設置状況なども確認しました。また、鶏糞は堆肥や鶏糞発電にも活用されていることもわかりました。
点検中、継続的に草刈りをされていました。特に夏場は暑い上、草の生育が早いので、大変な作業です。
出荷される鶏は、再度、飼育の記録から休薬期間が守られていることを確認した上でカゴへ集められ、「京都生協産直若どり」としてまるほ食品㈱徳島工場へ運ばれます。
【農場の点検者所見】
猛暑や降雪など、厳しい条件もある中、鶏舎内を良好な環境にするべく、鶏の状態(水やエサをしっかり食べているかなど)をよく観察しながら、換気や保温、掃除をしておられます。鶏舎内の環境が悪いと鶏が体調を崩し、死んでしまうこともあるそうです。京都生協がお願いしている休薬期間を守り、鶏舎に入った雛がみんな揃って大きくなるよう、日々努力されていることがわかりました。
【泉木農場を管理されている石槌さんからのメッセージ】
私は動物が好きでこの仕事を選びました。ヒヨコが入ればお休みもなかなかとれません。でも日々大きくなっていく鶏を見ていると楽しいです。鶏にどうしてやれば気持ちよくエサを食べてくれるのか考えながら飼育しています。これからも安全安心な鶏を育てていきます。
ここから工場での鶏の受け入れです。
農場から鶏を運んできたトラックは、敷地入口にある消毒装置で消毒し、鳥インフルエンザなど、鶏の病気の原因を持ち込まないようにされています。
消毒を終えたトラックは、鶏の入ったカゴを降ろし、受け入れ場所に並べます。
「京都生協産直若どり」以外の鶏もあるので、農場ごとに分けて管理されています。
ここから工場の点検です。
こちらは工場の入口です。工場内専用の服に着替え、専用の長靴を履きます。次に粘着ローラーで、服に付いた髪や塵をとります。次に消毒液が入った水槽内で長靴を消毒。手を洗い、水分を取り除いた後、アルコールで消毒します。(私自身も従業員のみなさんと同じ手順で工場へ入りました。)
受け入れたすべての鶏は、ありがたく命をいただいた後、徳島県の検査員による食鳥検査(食用に適するか確認)を受けます。食用に適さないと判断されたものは廃棄されます。)
次に鶏を冷却槽に入れ、氷水でしっかり冷やすことで肉の鮮度が維持できます。冷却槽の水温が管理基準内であることを、現場の温度計と記録で確認しました。
続いてモモ肉、ムネ肉、手羽元、手羽などに切り分ける作業工程です。連続して運ばれてくる鶏は、機械や人の手で処理されていきます。機械の処理速度もさることながら、作業者の包丁さばきも素早く、驚きました。(早いだけでなく、肉がていねいに取り扱われていることも、確認させていただきました。)
作業者は作業衣やマスク、手袋を決められた通りに着用しているか、作業場自体はきれいか、機械やコンベアに洗い残しがないかなど、衛生的な環境で処理されているかを、見て確認しました。
部位別に切り分けられた鶏肉は、計量、包装された後、金属探知機で金属異物がないことを確認します。金属探知機の動作確認は、始業前、中間、終業時にチェックされていることを、記録で確認しました。
「これまでは骨の取り残しがないかを目視のみで確認していましたが、近日中にX線探知機※で確認する予定です。」と説明がありました。
※X線探知機・・・健康診断におけるレントゲン検査のように、肉を撮影して肉以外のもの
(ここでは骨などの異物)を見つける機械。
包装された鶏肉を保管する冷蔵庫を点検しました。庫内温度が管理基準内であることを記録で確認しました。
出荷の際も、トラックの庫内温度が管理基準内であることを確認してから積み込まれているとのことです。
工場の入口で、長靴の消毒槽などの清掃作業と、手洗い洗剤などを補充する作業を確認しました。
工場の排水は、浄化槽で処理されています。処理後の水質や、浄化槽にたまる汚泥の処理も、法的に問題ないことを確認しました。
工場内で使用される水の水質検査結果、作業の手順書などの書類を確認しました。また、鶏の仕入れ伝票や、ムネ肉、モモ肉などの製造記録をもとに、製品のラベルから、どこの農場で育てた鶏が使用されたのかを、たどれる仕組みがあること(トレーサビリティ)※1を確認しました。
※1 京都生協産直若どりのトレーサビリティについて
産直若どりの製品ラベルには、17桁のロット番号が記載されています。これを京都生協ホームページ内にある「トレーサビリティ情報検索」へ入力し検索すると、「京都キョウショクが京都生協の店舗へ出荷した日」「まるほ食品が食鳥処理※2した日」「使用した鶏の生産農場と出荷日」を、順にさかのぼることができます。
製品ラベルの情報から産地などをさかのぼれる「トレーサビリティ情報検索」は、産直みつせ鶏、産直鳥取牛、産直大山あじわい豚、産直飛騨あじわい豚、産直さくら卵、産直さくらこめたまご(10個入り)、産直白卵でもご確認いただけます。
京都生協ホームページ HOME >コープの商品 >商品情報検索 >トレーサビリティ情報検索 https://www.kyoto.coop/meat_info/traceability.html
※2 食鳥処理・・・鶏の命をありがたくいただき、鶏肉を加工して部位ごとに分ける作業。
【工場の点検者所見】
肉を部位別に切り分ける作業場で、肉が通る機械やコンベアが、きれいに洗浄されていることを確認しました。昨秋、作業場を増床の上、機械の増設と配置変更、コンベアの更新されたこともあり、より衛生的で、作業しやすい状態になったことがわかりました。
【まるほ食品㈱からのメッセージ】
当社は「安心安全」の商品づくりを目指すために、長年にわたり検証を重ねて構築した製造工程管理を基本として、従業員一丸となり日々の業務に進めております。特に品質に関わる衛生面、鮮度保持においては常に妥協することなく向上を目指す構えであり、組合員様の食卓に良質な「鶏肉」がならぶことを願っております。今後とも宜しくお願い致します。
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