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【教えて!森田さん 食の安全・安心】未来のたんぱく質  昆虫食

  • 2022年12月01日
  • とりくみ・活動

【今月のテーマ】未来のたんぱく質 昆虫食

昆虫を食べるのは、日本ではイナゴやハチノコの佃煮など一部の地域だけですが、世界ではさまざまな昆虫が食べられています。
最近はコオロギせんべいなど新しい昆虫食もお目見えしています。
その栄養価や安全性について、ご紹介しましょう。

高タンパク質で環境にやさしい
昆虫食が注目されるようになったきっかけは、2013 年に発表された国際連合食糧農業機関(FAO)の報告書です。
世界で20 億人の人々が昆虫を日常的に食べ、その種類は1990 種類以上に及ぶこと、その多くはタンパク質を含み、カルシウム、鉄分、亜鉛の量が豊富なことなどが記されています。特にタンパク質の量は牛や魚と比較してもそれほど劣りません(表)。

2022_12_copolo_anzen_anshin.jpgその上で報告書は、今後の食糧問題や環境問題の解決策として、昆虫の食用化、飼料化を推奨しています。
例えばコオロギは、牛肉よりも温室効果ガス排出量、水やエサの必要量がはるかに少なく、持続可能性という視点で優れているということです。
近い将来のタンパク質源として、昆虫の生産量を増やすためにさまざまなルールが必要としています。

エビ、カニアレルギーの方は注意
安全性の観点からは、衛生的な問題とともに、食物アレルギーに注意が必要です。
昆虫には、エビ・カニなどに特有のアレルゲンと構造がよく似た成分が含まれ、昆虫食による症例も報告されています。
消費者庁は、昆虫食のアレルギー表示について義務付けてはいませんが、「エビやカニにアレルギーをお持ちの方はお控えください」などの注意喚起表示例を示しています。

また、生産に関するルール作りも始まっています。
昆虫食は東南アジアで一般的で、コオロギやカイコ、バッタなどで養殖が進んでいます。特別なエサを与え、他の虫や菌と混ざらないような環境で管理されるなど、国ごとに基準が整備されつつあります。
欧州ではミールワーム(ゴミムシダマシ科の幼虫)の安全性評価が済み、製品開発が進んでいます。
日本でも農林水産省が事務局となった協議会で、2022 年夏にコオロギのガイドラインが作られており、生産施設や管理方法が示されています。

これまでは一部の人たちだけの昆虫食で、姿がそのまま見えるような食べ方も多かったのですが、最近はハンバーガーやパスタに練りこむなど食べやすく工夫された食品も販売されるようになりました。

現在、昆虫食市場は毎年平均150%近くの成長を続けており、2027 年までに世界で46億ドルの市場に達すると予想されています。環境にやさしい未来のタンパク源となるのか、世界で注目されています。

(参考)国際連合食糧農業機関(FAO)報告書
「Edible insects―Future prospects for food and feed security」https://www.fao.org/docrep/018/i3253e/i3253e.pdf

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教えて!森田さん 食の安全・安心」は機関紙コーポロに毎月掲載しています。




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