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【食の安全・安心】開発が進む培養肉 安全性は?
- 2023年07月25日
- とりくみ・活動
【今月のテーマ】開発が進む培養肉 安全性は?
牛や鶏から取り出した細胞を培養してつくる「培養肉」が話題になっています。2025 年の大阪万博では、大学と企業が共同開発した培養肉の試食を目指しているそうですが、安全性も気になります。今回は、培養肉の現状と課題についてまとめます。
開発が進む培養肉の技術的な課題
培養肉は2013 年、世界で初めてオランダの大学教授によって開発され、世界各国で研究開発が進みました。2020 年には、シンガポール食品庁が世界初の鶏の培養肉の販売を承認しました。
食肉に代わる未来の肉として「代替肉」の研究が進む背景には、近年の気候変動の影響や食料危機などにより、今後の食肉供給不足が予想されていることが挙げられます。代替肉の1 つとして、既に大豆ミートなど植物性タンパク質も注目されています。こちらは長年の食経験があって技術も確立されており、広く販売されています。
一方、培養肉も代替肉の1 つですが、開発は途上段階にあります。製造法は、まずは生きている牛や鶏から細胞組織を採ってきて、培養液に浸して細胞を増やし、それを束ねて成形するという流れです(図)。増殖した細胞はペースト状なので、「肉らしさ」に近づけるためにさまざまな成形技術が使われ、3D プリンターが使われることもあります。肉の食感、おいしさ、適正価格に近づくためには、技術的課題は多く残されているのが現状です。
安全性の議論はこれから
培養肉の安全性も大きな課題です。培養肉は食経験がないため、安全性が確認されるまでは販売は許可されません。今年に入って、厚生労働省は専門調査会でヒアリングを行っていますが、安全性を確認するためのルールづくりはこれからです。
国際的に見ても培養肉を許可している国はごく一部です。今後の状況を見据えて国際機関も動きだしており、国際機関である国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)は、2023 年4 月に「細胞由来食品の安全性」に関するレポートを公表しました。レポートは、培養肉の事例を紹介し、安全性やリスクコミュニケーションなどについて方針を示したもので、4つの製造工程(細胞の取り出し、細胞増殖、収穫、成形)ごとに、危険因子、健康への影響、対策などを示しています。例えば、細胞増殖の段階では、培養液に不純物が混入するリスクなどを具体的に示しています。
さらに、表示の問題もあります。そもそも培養肉を「肉」と呼んでいいのか、名称も含めて表示のルールについて定めていく必要があるでしょう。今後、法整備が進む中で、消費者へのリスクコミュニケーションも求められます。培養肉が世に出ていくまでには、いくつものステップが必要で、私たちも注意を払って見ていかねばなりません。
*FAO/WHOレポート
「Food safety aspects of cell-based food」
https://www.fao.org/documents/card/en/c/cc4855en
社会的テーマから身近なテーマまで「食」の安全に関する情報を専門家が解説
「食の安全・安心」は機関紙コーポロに毎月掲載しています。
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