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【食の安全・安心】卵とコレステロール
- 2023年11月28日
- とりくみ・活動
【今月のテーマ】卵とコレステロール
卵はコレステロールが多いため、控えている方も少なくないようです。しかし、最近の研究では、卵を毎日食べてもコレステロール値にそれほど影響しないことが分かってきました。
コレステロールの多くは体内で合成
卵はコレステロール含有量が高く、中サイズ1個(中身55gの場合)で204mg含まれます。日本人が食事から摂取するコレステロールはおよそ300mg程度で、卵が占める割合が最も多くなっています。かつての厚生労働省の「日本人食事摂取基準2010年版」では、食事からのコレステロールの目標量は、1日あたり男性750mg未満、女性600mg未満とされており、卵を取り過ぎないよう注意が呼びかけられてきました。
しかし、世界中の疫学調査を評価すると、卵の摂取量と動脈硬化性疾患とは関係ないことが分かってきました。日本人のデータを見ても、1日に卵を2 個以上食べた人と、ほとんど食べない人との間に死亡率の差は見られませんでした。
コレステロールは体内でも合成され、その量に比べると食事から取るコレステロールは1/3 ~1/7に過ぎません。また、食事から取る量が増えると体内の合成量は減り、足りなければ合成量が増えるように私たちの体の中で調整されます。
このような知見から、5年ごとに見直しが行われる「日本人の食事摂取基準2015年版」からは、食事からのコレステロールの目標量は定められなくなりました。米国でも、コレステロールの基準がなくなりました。この頃から「卵は控えなくてもよい」という話を、聞くようになりました。
バランスよく健康な食生活を
確かに、食事からのコレステロールが、血中コレステロール値に直接の影響を与えないのであれば、卵をたくさん食べても大丈夫そうです。しかし個人差もあって、食事中のコレステロールの量に影響を受ける人もいて、誰もが量を気にしなくてもよいというわけではありません。また、脂質異常症のある人(LDLコレステロール値が高い人など)は、卵だけでなく、コレステロールが多く含まれる食品全般を食べ過ぎないようにしましょう。
一方、卵を毎日1個食べる人は、ほとんど食べない人に比べて、脳卒中や心血管疾患のリスクが低下するという研究も発表されています。また、日本人の研究では、卵を1日1個以上食べても糖尿病発症リスクは上昇しないことも示されています。
高齢者では、コレステロールを制限しようと卵を控えたりすると、タンパク質不足となり、低栄養になる可能性もあります。むやみに卵を控える必要はなさそうです。
参考資料
厚生労働省 日本人の食事摂取基準
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
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