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【食の安全・安心】小林製薬の紅麹サプリ 求められる原因究明

  • 2024年07月06日
  • お知らせ

【今月のテーマ】小林製薬の紅麹サプリ 求められる原因究明

 紅麹のサプリメントを摂取した人が、腎臓の病気などを発症したとして3月22日、小林製薬は3製品の自主回収を発表しました。同社に寄せられた健康被害は、2カ月後の5月29日時点で死者数5人、入院治療を要した人284人、医療機関を受診した人1,614人と、類を見ない被害の大きさとなっています。
何が原因だったのでしょうか。

難しい原因究明と物質特定
 今回の問題は、小林製薬の工場で製造した紅麹原料が原因で起きました。同社で健康被害が寄せられた製品の原料を調べたところ、想定していない物質が共通して検出されました。 
 この物質は、青カビから発生することがある「プベルル酸」というカビ毒であることが分かっていますが、国の研究機関が調べたところ、他の物質も含まれていることが分かりました。これらが人体にどのような影響を与えたかなど詳しいことは分かっておらず、全容は明らかになっていません(5月末時点)。いずれにしても紅麹原料ができるまでの工程で、何らかの不備が起きたことが原因と見られています。
 同社の紅麹原料は、食品素材として他社にも販売されていました。こちらは培養期間が短く、想定しない物質は混入していませんでしたが、念のため多くの企業が自主回収を行いました。

ベニコウジ色素や麹まで 風評被害が拡大
 この問題を受けて、さまざまな風評被害が広がっています。紅麹と名前がつく食品は全て危険と思われてしまったようですが、汚染された紅麹原料は同社原料の一部に過ぎません。
 また、食品添加物の「ベニコウジ色素」は、他社が製造したもので、使われる紅麹菌も原料・製法が異なります。こちらは食品添加物として規格基準が定められ、その基準に適合したものが販売されており、安全性に問題はありません。水産加工品や菓子などに広く使われていて、原材料の食品添加物の表示に「ベニコウジ色素」などと書いてありますが、これは小林製薬の紅麹原料とは全く違うものです。
 また、しょうゆや味噌、日本酒など、日本の伝統的な発酵食品に使われる「麹」も風評被害の影響を受けています。「紅麹」と名前は似ていますが、種類も属も全く異なるもので、こちらは長い伝統と食経験がありますので、ご心配には及びません。
 今回の問題は、健康食品のサプリメントの安全性を問い直すものとなりました。健康被害が起きたらすぐに国や地方自治体に報告するべきだったのに、それを法律で義務付けていなかったため報告が遅れ、被害が拡大しました。また、自主回収された製品は「機能性表示食品」として販売されており、この制度のあり方も含めて法改正が進められています。いち早く原因究明が進み、同じような事故が二度と起こらないようにしてほしいと思います

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